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新社会人おめでとう。 [日記]

「新社会人おめでとう」と題して、毎年4月1日にSUNTORYの広告が新聞に掲載されます。
ノートに貼り付けた平成8年の広告です。

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倉本聰の新社会人劇場

「鍵」一幕一場(会社帰りの酒場にて) 作 倉本聰

係長 「まアそうかたくならんで飲みなさい。もう勤務外の時間なンだから」
新人 「ハ。」
係長 「どう。初めての会社の印象」
新人 「ハ。大変アットホームで素晴らしく」
係長 「―」
新人 「課長も部長も良い方ですし」
係長 「フム。まアグッと飲みなさい」
新人 「ハ。」
 
 間

係長 「ねぇ君、嘘はいけませんよ」
新人 「ハ?いや自分、嘘なんて」
係長 「課長も部長も良い方である、と、それは一寸言い過ぎじゃないですか?」
新人 「イエ自分、本当に」
係長 「良い人。ある意味ではたしかに良い人。しかし課長には一寸問題があります」
新人 「アノ、係長、それはどういう」
係長 「鍵を紛失しちゃったンですあの人」
新人 「鍵?」
係長 「そう、鍵です」
新人 「鍵とは、何の」
係長 「氷を入れましょうもう少し」
新人 「ア!スミマセン!」
係長 「学生から初めて社会人になる。実になんというか心躍って、―恐らくあなたには今胸の中に、俺が新しく加わった以上、社会をこう変えたい、会社をこうしたい、溢れんばかりの新鮮な夢がいっぱいふくらんでると思うんです。ちがいますか」
新人 「はい。自分、たしかに今」
係長 「だったら函をお買いなさい。できるだけ高価で美しく、しかもしっかり鍵のかかる函を」
新人 「函を、ですか」
係長 「そうです。そうしてその函の中に、今あなたの持つ純粋な夢をしっかりおさめて鍵をかけちゃうんです。夢を今出しては絶対いけません。今出しちゃいけません。しまっておくんです。偉くなるまで」
新人 「ははア」
係長 「但しその函のことを忘れちゃいけない。時々出してその中身を確認する。ところがですね」
新人 「はア」
係長 「サラリーマンはたいがいの人間が段々その函のことを思い出さなくなる。気がつくと鍵も紛失している。 課長がそれです。部長は―珍しくあの歳でまだ鍵を持っている」
新人 「係長はまだ鍵をお持ちなんで」
係長 「持ってますとも。見たいですか?」
新人 「是非」
係長 「うむ。―じゃあもう一杯お代わりをしましょう」

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久しぶりに読みました。
私は鍵をちゃんと持っています。
「偉く」なっていないので、まだ「出す」ことは出来ませんが。
早く「偉く」ならないと死んじまいます。

では、御機嫌よう。
タグ:新社会人
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コメント 2

toyo

いい話ですね。
私の函は?・・・どっかに置き忘れて・・
しまったみたいです・・ぶつぶつ(笑)
失礼しました。


by toyo (2010-04-03 17:30) 

o_renn

いつもお読みいただきありがとうございます。

by o_renn (2010-04-04 05:55) 

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